心霊学研究所
『ジャック・ウェバーの霊現象』
ハリー・エドワーズ著/近藤千雄訳
('01.01.18登録)
○霊媒現象と病理現象 曾てはロンブローゾ、リシェ、ポドモア等の心霊学者によって霊媒現象が病理現象として扱われたことがあったが、今日では病理現象ではないとの説がほぼ一般的である。つまり、ヒステリーのような病的状態の発展したものではないということである。見解に混乱が生じた原因は、マイヤースが述べているように、霊媒現象も病理現象と同じパターンで発生しているとの誤った観察にあった。病的現象は“退歩性”の現象であり、霊媒による現象は“発展性”の現象である。すなわち前者がすでに獲得された能力の病的変態現象であるのに対し、霊媒現象は人類の有する未知の能力の先駆けである。 ジュネーブ大学の心理学教授T・フラワノイは霊媒のヘレン・スミス夫人を徹底的に観察した結果、次のような結論に達した。すなわち“霊媒現象を病理現象であるとする見解は全く見当ちがいと言うべきである。滅多に見られない、例外的である、という意味においては確かに異常である。が、珍しいということは病的ということではない。私がそうした現象を真剣に、そして科学的に検討した数年間という期間ではその本質を断言するには十分とは言えない。ただ興味ぶかいのは、この道では最も徹底した研究を進めている国すなわち英国と米国の学者の間で最も支配的な見解が霊媒現象を実在と認めていることである。そしてこれをヒステリーの特殊症状と見なすどころか、すぐれた能力、有益な能力、健全な能力と見なし、一方、ヒステリーは一種の退化現象であり、病的パロディであり、変態的戯画であると観ていることである。” 近代では人間の全てが潜在的に霊媒的素質を持っているという考えがある。D・ブラッドレーは“霊媒現象は、その中でも最も進歩的で強力なものでさえ、遠い未来において発達するであろう段階に比べれば、ぎこちないあがき程度のものでしかない。あと半世紀もすれば今日の数少ない優れた霊媒は最初にパラシュートで降りた人間にも匹敵する評価を与えられるであろう”と述べている。 これはいささか誇張のきらいがあるが、ステイントン・モーゼスの自動書記通信によると“霊媒的素質は霊体に属するもので肉体のものではない。それは肉体が滅びたあとも存続する。地上で霊媒だった者は死後も相変わらず霊媒的素質を所有しており、われわれと共にそれを活用する。地上を訪れる霊にはこの種の者が一番多い”ということである。 霊媒能力はきわめて繊細な性質をしている。その開発には用心と理解が肝要である。オリバー・ロッジも霊媒はわれわれが調査・研究するための繊細な道具として大事に扱うべきであると述べ、“霊媒は一つの道具として、その習性と特質を熟知しなければならない。そしてある程度その扱い方のコツも知らねばならない。それはちょうど一流の器具メーカーが生産した器具でも使い方にコツがあるのと同じである”と述べている。
○年齢、性別、性欲の問題 遺伝的霊能は芸術的才能と同じく、大低突発的に、しかも若い年齢で発現する。ハイズビル事件で主役を演じたケート・フォックスがその後結婚して生んだ男の子が僅か五か月で自動書記現象を起こし、枕元やベッドの鉄の棚で叩音《ラップ》現象がほとんど毎日のように聞かれた。英国の直接談話霊媒クーパー夫人の七か月の子もラップで通信を行なった。僅か生後九日で自動書記を行なった赤ん坊もいる。フランスでは十四〜五か月の赤ん坊が完壁なフランス語で説教をした例が何例かある。ニグノー教派の信者が迫害を受けた時にそれらの赤ん坊も投獄された。 性別の差は顕著である。女性の霊媒の方が圧倒的に多い。とくに物理現象を得意とする女性霊媒が多いことは、体質的に女性の方がエクトプラズムが多い、あるいは抽出しやすいことを暗示していると思われる。 が、それより問題なのは女性的機能の発育、端的に言えば性欲《セックス》が影響を及ばしている事例が多く見られることである。有名なエバC《シー》とウィリー・シュナイダーには異常性欲症状が伴っていた。性欲を知らない子供の霊能者は水晶占いが最も適しているという古い記録もある。コナン・ドイルが調査した妖精写真の主人公の二人の女性は、思春期に入ってからは妖精を見なくなっている。ポルターガイストの発生は十二〜十六歳の少年少女の居るところが最も多い。キャリントン博士は一九二一年のコペンハーゲンにおける国際心霊研究学会の第一回総会で、体内に蓄積された性的エネルギーが正常に発散されずに、別の回路を経て心霊現象の形で体外に出たというケースも考えられるとの見解を発表している。その根拠として博士はゴライヤー、エバC、パラディーノ等の実験でみられた生殖器との関連性、インドのヨガ僧が高等な恍惚状態《エクスタシー》を性的エネルギーと結びつけ、後者を前者へ転換する理論を説いていること、それがフロイトの精神分析学における“昇華”の理論、つまり性と宗教との関連性と同一であることを挙げている。
○健康への影響 過度の実験開催は極端に不節制な性癖----飲酒、喫煙、大食等を生むことがある。体力の極度の消耗が原因である。中毒症状と譫妄《せんもう》状態(外界からの刺激に対する反応を失い内面的な錯覚・妄想によって不穏な精神的症状を見せる)で死亡した例が少なくない。 が、過度の実験さえ控えれば健康上何ら差し障りはなく、むしろ健康を増進させる傾向さえ認められる。賢明な背後霊は絶え間なくアドバイスを与えて本人に気づかない面での健康管理をし、万一病気になった時も霊的な治療を施してくれる。D・D・ホームなどは生来肺臓が弱かったにもかかわらず、ふつうの生活を送った場合に予想される寿命よりもはるかに長生きをした。生まれつき虚弱だった霊媒で八十歳以上の高齢まで生きた人が大勢いる。そうしたケースでは、背後霊のアドバイスで時おり霊媒活動を中断している事実も原因として挙げられる。 よく霊媒は精神病になりやすいと言われるが、実際の統計では事実に反していることが明らかにされている。E・クローエル博士は四二の精神病施設を調査した結果、男性患者三二、三二二名のうち牧師が二一五名で、霊媒は男女合わせても僅か四五名であった。異常者の割合は牧師が一五九人中一人で、霊媒が七一一人中一人という結果が出た。
○霊媒の危険性 健康上の問題とは別に実験中の危険性の問題がある。これには二種類ある。一つは邪霊・悪霊の類による憑依、もう一つは物質化現象に伴う身体上の危害である。 モーゼスは“霊媒能力は必ずしも全ての人に勧められるものとは言い切れない。正直言って危険が伴うからである。危険が伴うことは全て避けるべきだと言うつもりはない。危険を承知の上でやらねばならぬ仕事もある。が、はっきり言えることは、霊媒現象は計り知れない恩恵をもたらす一方、およそ恩恵とは言えないものまでもたらすことである。”そう述べて、さらに具体的にこう述べている。 “霊媒能力の養成においては三つの重大なポイントを考慮しなければならない。すなわち、果たしてあなたは(1)賢明にして善性をもった、(2)安心して身を任せられる、(3)強力な力をもった霊との縁を得る自信があるか、ということである。もし自信が無ければ、あなたは深刻な危険に身を曝すことになることを覚悟しなければならない。” 次に身体上の危険性であるが、例えばデスペランス夫人の実験会において、列席者の中に霊媒的素質の強い女性がいて、出現した物質化霊のエクトプラズムの殆どがその人から抽出されていた。その物質化霊を出席者の一人がいきなりひっつかんだ。それがもとで(エクトプラズムが一気に人体に戻る時の衝撃で)その女性が重傷を負い、長いあいだ患った末に死亡した。 危害を与えるのは列席者だけとはかぎらない。善霊といえども知識と経験の不足から霊媒の取り扱いを誤り、それがもとで霊媒が健康を損ねることも有り得る。
○霊媒の種類 大きく分ければ物理霊媒と精神霊媒の二種類になるが、物理的現象にも多少の精神的現象が伴い、精神的現象にも多少の物理的現象が伴うものであるから、截然とは分けられない。 物理的現象の主なものとしては叩音《ラップ》現象のような単純なもの、D・D・ホームがよく見せた、真っ赤に燃えさかる石炭を素手で掴んだり炎の中に頭を突っ込んだりする現象、見えざる手が楽器を演奏する音楽現象、鉛筆がひとりでに動いて文章を書いたり絵を描いたりする直接書記現象、そして最もドラマチックな人体の物質化現象。これには顔だけとか手先だけのものと、全身がすみずみまで物質化して歩いたり、しゃべったり、時には飲食さえするものなどがある。心霊写真も一応この部類に入る。 次に精神的現象の主なものは、自動書記、霊視、霊聴、入神談話、それに心霊治療も医学的な物療的方法に頼らないという意味で一応この部類に入れてよかろう。 が、これとさきの心霊写真とは物理性と精神性の要素が複雑に絡み合った現象で、本来は別の部類として考えるべきであろう。 "Medium" from An Encyclopedia of Psychic Science by Nandor Fodor |