心霊学研究所
『ジャック・ウェバーの霊現象』
ハリー・エドワーズ著/近藤千雄訳
('00.10.24登録)
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No.26〜No.34に見られるエクトプラズムは赤色光の中で列席者全員が肉眼で繰り返し観察している。暗闇の中での実験の場合は、発光性の飾り板《プラーク》(第五章でグレイ氏がタブレットと呼んだのと同じもの)が照明がわりに使われて、エクトプラズムが霊媒の身体から出るところなどがしばしば観察されている。 エクトプラズムが出てくる過程はこうである。まずウェバー氏がロープに縛られたまま顔が足の真上に来るまで前かがみになる。すると口から水蒸気のようなものが出はじめる。出てくると巻き物を広げるように一枚に広がりながら氏の身体の前を通って床の上に降りていく。 床に垂れ落ちたあとも引き続き口から滝のように出てきて、数フィート四方にものすごい量のエクトプラズムが広がる。そのスピードがまたものすごく、この間わずか数秒しか掛からない。 出たばかりの水蒸気状のものが凝結する、あるいはひとかたまりになるのに、わずか二、三秒しか掛からず、見る間に霊媒の口から織物状の物質が垂れ下がっていくといった感じである。 生地はその時の実験会の状態や霊媒自身の健康状態によってさまざまである。状態のいい時はキメがこまやかで美しいが、状態がかんばしくない時はキメが粗《あら》く、No.27に見られるような裂け目が出来たりする。 筆者をはじめ何人かの列席者がブラック・クラウドの許可を得てその物質に手を触れたことが何度かあるが、ベトベトとまではいかないが湿り気があり、一種独特の臭いがする。 筆者は何度かその折り重なって床に落ちている織物状の物質を広げてみることを許されたが、その時は細心の用心が必要である。が、大人の私が両手で広げてもなお広げ切れないほど幅が広く、ある実験会ではブラック・クラウドの許可を得てもう一人に手伝ってもらったことがある。その時は二ヤードばかりあったと思われる。 No.34は列席者がエクトプラズムにさわっているところで、写真によく写るように持ち上げなさいというブラック・クラウドの要請に従って、少し持ち上げたところである。こうした時、列席者は傷つけないようにとひどく神経質になるもので、この写真を見てもわかる通り、二人とも片手だけでそっと持ち上げている。しかし、これだけでもエクトプラズムの長さが十分見当がつくであろう。 出て来たエクトプラズムが霊媒の体内に戻る速さもまた瞬間的である。一度は筆者がそっと握った次の瞬間、まるでゴムのようにピューンという音とともに消えてしまったことがある。 No.29を撮った時は赤色ライトをつけていたので列席者全員にエクトプラズムが見えていたが、あれだけの量のものがあっという間に消えて無くなった。その直後に霊媒がゴクリと何かを呑み込むような音が聞こえた。 エクトプラズムに触れてみた人の印象は人によってまちまちである。ある人は“きめ細かく編んだ上質の絹のようだ”と言い、またある人は“湿り気のある小型のバルーンのゴムみたい”と言い、“薄くて大きい海草”にたとえる人もいる。 同じエクトプラズムでも、こうした固まりと、物質化像がまとうものとは組成が異なる。単なる固まりには網目《ネット》のようなパターンはない。織物というよりは皮膚に近い。物質化像がまとう垂れ布は、ゴースのようにキメが細かく、クモの糸のような軽い生地をしている。一本一本の繊維が十三本から十五本のさらに細かい繊維で構成されており、一つの網の目の四辺をそれぞれ四重に重ね編みしてある。その一つの網の目の大きさはピンの先ほどで、こんなものはとても人間わざでは作れない。 ブラック・クラウドから直接筆者が教わったところによると、写真に写っているエクトプラズムはみな細胞で出来ていて、神経も毛細管もあり、従って感覚もあるとのことである。 確かに、どんな形態であってもエクトプラズムはすべて霊媒の身体から出て霊媒の身体に戻っているのであるから、本質的には人体の一部であるわけで、従って当然生き物であることになる。 次章の物質化現象で詳しく取り挙げるが、このエクトプラズムは霊界のスピリットがその姿を人間の目に見せるための大切な材料である。もっとも、その時のエクトプラズムの形状がどうなっているかはウェバー氏の実験では確認できていない。 物質化の過程について背後霊の一人である科学者のミラー博士はこう説明している。 まずエクトプラズムが製造されると、専門の霊が出現を希望するスピリットのエーテル体(幽体)のまわりにそのエクトプラズムを塗りつける。その際、そのスピリットはエクトプラズムの中から物質化するために必要なエネルギーを吸収することが出来る。そうすることによって内臓までも物質化させて、地上時代とまったく同じ固さの物質をまとうことになる。それでしゃべったり歩いたりと、人間と同じことが出来るわけである。 ある実験会で、手先だけ物質化したものが赤色ランプのところへ行き、それを握って天井の掛け金からはずした。その電球には、取り付けの部品のところにスイッチがついていて、スピリットにも点滅できるようにしてあるのであるが、この時はそれを手にとってエクトプラズムに近づけ、その半透明の生地を照らしてみせ、編んだ形跡がまったく無いところを見せた。糸状のものが見当たらず、また糸が交差したところもなかった。 発光性のプラークで照らし出されたところを見ると、そのエクトプラズムの生地はぼんやりとしていて、はっきりとした縁が確認できなかった。同じプラークでロッドを見せてもらった時は縁がきわめて鮮明でくっきりとしており、“関節”のようなふくらみがいくつか見えた。そしてずっと辿っていくと、根元は太陽神経叢のあたりから出ていて、その先端で物を持ち上げていた。 空中高く浮揚しているメガホンをプラークで照らして見せてくれたことがあるが、そのまわりには何の支えも見られなかった。 No.26は実験会が始まって二分もしないうちに撮ったもので、ウェバー氏は椅子に縛りつけられ、白色光のライトは消されたが、ルビーガラス製の赤色ランプはつけたままだった。列席者が開会の歌をうたい始めると、まだ入神していなかったウェバー氏が「顔に何かが被さっている。写真を撮ってみて下さい」と言うのでシャッターを切った。それがこの写真である。 自色光の中でメガホンが浮揚している写真は珍しくないが、この写真は赤色光とはいえ霊媒が入神していない“普段のまま”の状態の時にエクトプラズムを撮った(多分はじめてと思われる)ものである。普段のままという点を強調したのは、ウェバー氏は自分を通じて演出される現象を見ると極端に緊張状態に陥る人で、その状態の中でこうした写真が撮れたという点に注目したいからである。 シャッターを切ったあとブラック・クラウドが“独立談話”で今の写真には霊媒の顔と頭にエクトプラズムが被さっているのが写っているはずだと述べた。 その時のエクトプラズムの出所は首のすぐ下あたりだった。 同じ実験のずっと後半で、何人かの列席者も霊媒の方から伸びてきたエクトプラズムで同じように頭部を被われるのを感じている。この時のメンバーはわずか七人で、その全員が、エクトプラズムが一面に広がって脚のところまで埋まってしまうところを目撃している。その時は部屋の温度の低下が著しかった。 No.32は五ヤードもある長いエクトプラズムで、広角レンズでも全部は入らなかった。
No.30とNo.31はこの一月に筆者が撮ったもので、背後霊団が開発した新たな技術を誇っているかの如くブラック・クラウドが意外な指示をして来た特殊な写真である。われわれが何とかして証拠性のある写真を撮りたいと苦心しているその努力に背後霊団も協力していることを示していて興味ぶかいので、ここで解説しておきたい。 この時は筆者が撮影を担当し、チャンスがあれば自色光をつけてシャッターを切る準備をしていた。実験会が進行し、やがて霊媒の方からノドを鳴らすような音がしはじめた時、ブラック・クラウドから「写真とライト!」という、今までとはまったく違う指示が出た。 ノドを鳴らす音がしはじめた時から写真のチャンスが近づいたと感じていたので、筆者はすぐさま赤外線のフラッシュのスイッチを押し、すぐその右手でシャッターを閉じ、さらに白色光のスイッチを押した。スイッチは二つとも押すだけの操作なので、両者の時間的間隔はほとんどゼロに等しかった。 実験会の始まる前からそのスイッチとカメラの位置を椅子に腰かけたままで操作できるように設置しておいたので、右の三段階の操作は瞬間的に行なわれ、赤外線フラッシュのスイッチを押してから白色光のスイッチを押すまでの間隔は感光板のシャッターを閉じるのみといってよく、それは、普通、二秒しか要しない。 最初に撮ったのがNo.30で、赤外線フラッシュを閃《た》いた二秒後に白色光をつけた時はこのエクトプラズムは見当たらなかったから、霊媒の体内に戻る速さはまさに電光石火であることがわかる。ロープで縛りつけられた霊媒がわずか二秒の間にロープをほどいて手を使ってエクトプラズムを処理し、再び縛られた状態に戻るなどということは絶対に不可能であろう。 また列席者の誰かが握り合っている手をそっとはずしてエクトプラズムをどこかへ隠し、しかも他の列席者に知られずにいるなどということも考えられないことである。同時に、それを自色光がつけられる直前の一、二秒の間にやってしまうというのも人間わざでは考えられない。 さて、感光板を入れ替え、フラッシュのバルブを取り替えた二、三分後に再び「写真とライト!」という指示があった。その時に撮ったのがNo.31である。その指示を待ち構えていたので、指示があってから前と同じ操作をするのに、この時はせいぜい一秒程度しかかからなかった。 写真を見ていただけばわかるように、エクトプラズムは大変な分量がある。これが一秒後にはすっかり消えて無くなっていたのであるから、霊媒への戻り方は一瞬のことだったわけである。 霊媒にとってこれほど厳しい条件は他に考えられないし、従って超常現象の証拠としてこれほど確実なものは考えられない。 一説として、エクトプラズムというのはチーズクロス(薄地の綿布)のような布で、それを霊媒が実験前に呑み込んでおいて、それを吐き出しそして再び呑み込むのだというのがあるが、この写真でそんな説は一蹴されよう。写真を見ても、またそれに要した時間的間隔を考えあわせても、そうした説の愚かさは明白で、これ以上コメントの必要を認めない。 実は各種の学術機関や写真協会の代表の前で同じ実験をする計画を立てていたのであるが、ウェバー氏の突然の死によってそれが実現しなかった。 そのことは確かに残念であるが、人間にまったく知られていないエネルギー、人体生理、及び霊的法則に関する知識をもちあわせた知的存在がその裏で働いていることを、この二枚の写真が疑問の余地なく証明していることを自信をもって断言する。 |