心霊学研究所
『ジャック・ウェバーの霊現象』
ハリー・エドワーズ著/近藤千雄訳
('00.10.03登録)
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本章では霊媒の発声器官でなくエクトプラズムで出来たボイスボックスからスピリットの声が聞こえる現象(直接談話現象)を検討する。もっとも、そのいずれも使用せずに声が聞こえること(独立談話現象)もある。 No.16〜No.19はその発声器官《ボイスボックス》を内蔵しているエクトプラズムの写真である。スピリットの説明によると、この中に霊媒の発声器官の複製品《レプリカ》が作られているという。こうしたエクトプラズムによる道具を製造するためには霊媒が完全に入神することが絶対に必要である。そしてスピリットの指示に忠実に従わなくてはならない。 他の霊媒による実験会で得られたボイスボックスの写真も形体がよく似ている。特にNo.18とNo.19はこれより数年前に米国の霊媒マージャリーによる実験会で撮影されたものとそっくりである。ロンドンとニューヨークという海を隔てた二つの場所で、しかも時間的にも数年の間隔を置いて、二人の霊媒を通じて同種の写真が撮れたという事実は、スピリットにもその製造技術を得る共通した知識源があることを示唆していて興味ぶかい。 スピリットの声の出場所がこうしたエクトプラズム製品であることは間違いない。というのは、霊媒のすぐ近くからかすかなしゃべり声が聞こえ、それが遠くにあるメガホンから大きく拡声されて聞こえてくるのである。そのかすかな声はちょうどレコードをアンプが接続されないまま聞く、あの遠く小さく聞こえる声とよく似ている。 そのスピリットの声が霊媒のノドから出ているのではないことは、そのスピリットの声がしている最中にブラック・クラウドが霊媒の口を使ってしゃべっていることがあることで証明されよう。 さらに証拠となる現象として、ブラック・クラウドが霊媒の口を借りてしゃべっている最中に、部屋の二つの場所でスピリットと列席者との間で別々の会話が行なわれることがある。結局その間は三つの異なったスピリットの声が同時に聞かれるわけである。 こんな時、声が出てくるメガホンは部屋の正反対の両端に位置し、明らかにメガホンの口から出てくる。従ってエクトプラズムの発声器官はメガホンのすぐ近くか、あるいはメガホンの内部に作られていることになる。この際メガホンと霊媒とは前章で説明したロッドで支えられたアームによって連結されている。 こうした現象を直接談話現象《ダイレクトボイス》という。 これとは別に、メガホンなしで、どこからでも明瞭な声が出てくる現象もある。これを独立談話現象《インデペンデントボイス》と呼んでいる。この現象がいかなる機構のもとに演出されているかについては、今のところ明確な手がかりになるものは得られていない。 掲載した写真ではいずれもボイスボックスが霊媒の身体に接触しているか、またはアームで連結されている。さらにこのアームがメガホンの口と連結されている。 この場合、ボイスボックスの中で発せられた声がアームを通ってメガホンヘ伝達され、そこで拡声される。アームを通してどういう具合に伝達されるかはまだ結論を出すところまで行っていない。可能性として考えられることは、そのアームがチューブ(管状)になっていることである。あるいはエクトプラズムそのものが音波を伝達する性質をもっていて、それがメガホンの内部に設置された振動板のようなものによって声に変えられるのかも知れない。 アームがチューブになっているという説を裏づけるものとして、No.14を見ていただけば、先端の握り手のすぐ上のところに口の形をした穴が見える。この穴からずっと管《くだ》になっているように見うけられるのである。前章でこうしたアームの先から光の輪が見られたことを述べたが、その事実もアームが管になっている証拠になっているのではないかと思われる。事実スピリットたちも“中空《ホロー》の棒《ロッド》”などという呼び方をすることがあるのである。 ボイスボックスによって声が出るメカニズムははっきりしている。要するに人間の発声器官とまったく同じ複製器を拵え、同時にそれを振動させるための送風器を拵えるのである。 力強い太い声がメガホンから続けて発せられると、空気を送り込む音がはっきりと聞こえる。そのリズムは発声しているスピリットの呼吸とぴったり一致している。これが歌になると一層明瞭になる。 もっとも、空気がボイスボックスヘ向けて送り込まれる方法はまだ確認されていない。可能性としては (a)霊媒の身体を通して直接送られる、(b)霊媒の身体から出てアームを通して送られる、(c)霊媒の身辺から発生する、の三つが考えられる。 (c)に関連して述べておきたいのは、物理的心霊現象の際によく見られる現象として、異常に冷たい風が発生することがあることである。信じられないほど強い風が吹くこともある。それが霊媒の身辺から発生して、時にはカーテンが水平になるほど吹き上げられることもある。その部屋の気温にしては異常なほど冷たいのが常である。従ってボイスボックスヘ送られる風も同じ原理で霊媒の身辺から発生するという可能性も考えられるわけである。 しかし霊媒の身体を通過するという説の方が可能性が高い。それは、右に述べたようにスピリットが歌をうたう時などに霊媒の方から大きく息を吸い込む音が聞こえることによっても判る。さらに、物品引寄《アポーツ》現象においては物品そのものが分解されて(非物質の状態で)霊媒の身体を通過して出てくることや、エクトプラズムそのものがみな霊媒の身体から出てくることを考えると、同じ原理で空気も霊媒の身体を通して送られることが十分有り得ることである。 しかもそれはブラック・クラウドが霊媒のノドを使う上で少しも支障にはならない。ボイスボックスを使っての直接談話と、ブラック・クラウドによる霊媒のノドを使っての入神談話とが同時に聞かれることがあることからそれが判る。 今も少し触れたが、ウェバー氏の実験会の大きな特徴の一つは、そうしてメガホンを使って、時にはメガホンを使わないでも、すばらしい歌が聞かれることである。主に賛美歌とバラードが歌われるが、背後霊の一人であるルーベン(第二章補遺参照)は声量といい声調といい正に一級品で、特に声量は凄い迫力があり、あまりの強さに時おり金属性のメガホンがビリビリと反響することがあるほどである。 直接談話のときはメガホンから霊媒には出せないような、まるで拡声器から出るような声になるが、声の質は明瞭で、音節が一つ一つはっきりと聞き取れる。 もしも霊媒が普通の状態でそれほど見事な歌がうたえるとしたら、こんな危険で窮屈な思いをしながら霊媒の役をやっていないで、コンサートホールに立っても立派に食べていけるはずである。 ルーベンがその迫力ある声量で一時間も歌い続けたことがある。普通なら、いかに鍛えられた歌手でもノドが嗄《か》れ、体力も続かないところである。レコード会社のデッカが賛美歌を二曲録音したことがある。 ルーベンほどの声量はないが、子供の支配霊のパディの歌もよく聞かれる。また女性霊の豊かなコントラルト(女性の最低声域)の歌も聞かれる。この他にも何人かのスピリットの歌が聞かれる。 人間わざでは絶対できない芸当として、ルーベンとパディが一本のメガホンで二部合唱(一方は豊かなバリトン、もう一方は甲《かん》高い子供の声)を聞かせることである。その時はボイスボックスはメガホンの小さい口の方に作られる。霊媒の位置からの距離も床からの高さも六〜八フィートである。声の出る場所は霊媒でもなく、霊媒の身辺でもなく、メガホンの中である。 注目すべきことは、そのメガホンの小さい方の口は直径わずか1/2インチで、しかも歌い終わったあと見ると、その口が潰《つぶ》れて半分ふさがっているのである。そんなメガホンを使ってゆっくりと落ち着いた声で、しかも明瞭な発音で歌うことは、人間わざでは絶対できない。 ルーベンはまた音響効果についても大へんな博学ぶりを披露する。録音する時はマイクロホンの位置を指示し、声にひずみが出ない位置にメガホンをセットする。ある実験会でH・ミラー氏が録音を担当していた時、反響効果を上げるためにツーピース(二つの部分から成る)のメガホンを用意しておいたところ、ルーベンはそれを使わず、他の何も使わずに、独立談話と同じ状態で見事な声と迫力で歌った。ルーベンほどのよく響く声を出せる人間はまずいないのではないかと思われる。 直接談話ないし独立談話によってスピリットから得た証拠性の高い通信は少なくないのであるが、ここではその内容までは言及しない。 内容以外のことについて参考になることを付記すれば、たとえばイントネーションも方言も非常に多種多様で、外国からの列席者にはその国の言語で会話が交わされた。男、女、子供の区別もはっきりしており、それぞれの会話の中にはその当事者にしか知られていないプライベートな家庭的な出来ごとが次々と出て来た。 独立談話の原理については残念ながら今もってよく判らない。この段階で言えることは、暗闇の中であっても白色光の中であっても、メガホンもボイスボックスも使用せず、それでいて実に鮮明な声が聞かれるということだけである。他の霊媒による実験会では霊媒がまったく入神していない状態でも独立談話が聞かれている。 こちらの手違いから入神中のウェバー氏が出血したことが何回かある。生命の危険があるのでライトをつけてもらって指示をあおぐのであるが、そんな時ブラック・クラウドやパディの声が霊媒から何フィートも離れたところから聞こえるのである。 こんな現象もあった。ある夜、実験会場から遠く離れたウェバー氏の自宅でパディの声がはっきりと聞こえた。しかも三つの部屋で同時に聞こえたのである。言葉も同じだったという。
二月十日、リンカーン市で行なわれた実験会でメガホンを通じてフランス語による談話が聞かれた。また一月二十七日にスコットランドのセントアンドルーズ教会で行なわれた実験会ではスエーデン語とポルトガル語による会話と、ラテン語による朗読が行なわれた。スエーデン語による会話の相手をした列席者は、スピリットのスエーデン語は完壁で、一点のなまりもなかったという。 ウェバー氏は教育らしい教育はほとんど受けておらず、書物もめったに読まない。氏が読むものといえば新聞と子供のマンガくらいのものである。 |