心霊学研究所
『ジャック・ウェバーの霊現象』
ハリー・エドワーズ著/近藤千雄訳
('00.09.12登録)

第十三章 メガホン現象


 

 メガホンの現象については第六章でコリン・エバンズ氏がかなり詳しく叙述している。

 いまや背後霊団の技術の進歩によって、メガホンの動きと照明の点滅の連動が完壁な段階にまで来ている。点滅係がブラック・クラウドからの合図を聞いてスイッチを切る直前までメガホンは激しく動きまわっている。その位置は椅子に縛りつけられた霊媒からはるか遠くにある。照明が消えるとそれが急降下する。すごいスピードなので床に落ちてからころがっていくことが多い。それがスイッチを入れたとたんに急上昇する。どこにあっても同じである。

 多い時は四本のメガホンが同時に浮揚したことがある。が、現象のすばらしさの点から言うと二本の時が一ばん良い。二本がそれぞれ部屋の両端に位置することもあるし、一本は天井を叩き、もう一本は床を掃くように動いていることもある。その高さは、いかに背の高い人間でも届かない高さであり、二本の間隔も、いかに腕の長い人が両腕をいっぱいに広げても絶対に届く距離ではない。

 くどいようであるが、霊媒は入神状態で両手両足を椅子に縛りつけられ、しかもその結び目をガムテープまたはワックスで固定されている。その状態で一秒の何分の一かの瞬間にそれだけの現象を見せるとなれば、これを霊魂《スピリット》の仕業とすることにもはや議論の余地はないと思われる。

 これらの現象を赤色光の中で見るとさらに興味ぶかい。メガホンが何ものにも支えられずに空中に浮いている様子がこの目ではっきりと確かめられるからである。

 そのメガホンが列席者の要求に応じていろんな動きをしてみせることがある。たとえば小さい口を霊媒の方へ向けていたのを、まるで軸の上にでも乗っているかのように、くるりと一回転して広い口を霊媒の方へ向けたりする。

 あるいは一人一人の列席者の頭のまわりを一周しながら全員をひとまわりしたりする。一周する時でも、最初広い口を外に向けていたのを、ぐるりと回転しながら向きを変えたりする。

 速く動く時のそのスピードは信じられないほどで、螢光塗料の光が尾を引いて一本の光の筋を描くように見える時がある。もっと速くなると狭い部屋の中では目がついて行けないことがある。

 それほどのスピードで動く二本のメガホンが一度も衝突することなく、込み入った動きを見せる光景は、まさに驚異である。

 そうした現象の起きる部屋にはシャンデリアとか電燈が下がっていることが多いが、メガホンがそのシャンデリアに当たったり電燈のコードに触れたりしたことは、それぞれ一回ずつあったきりである。もっともその時も、当たる直前にスピードが落ち、柔らかく当たっている。

 また猛スピードで動くメガホンが列席者の鼻の先スレスレを通ることがあり、風を切る音が聞こえ、動いた風が肌に当たるのがわかる。度々見られた現象としては、そうやって一人の列席者の顔スレスレに通ったメガホンが、次の瞬間には反対側の端にいる別の列席者の顔をそっと撫でるようなことをしてみせたことがある。その時のメガホンの扱い方は巧みさを極めている。

 同じことを人間が真っ暗闇の中でやって、しかも列席者に強く当たったりすることもなく、天井からぶら下がっているものにも触れないということは、まず不可能なことである。

 スピリットにしても、それだけの芸当をするにはよほどのエネルギーを費やしているに違いない。このことは、メガホンが大きく弧を描きながら床の上を掃くような動きをした時に敷物の上にはっきりとした跡が残っていることによって推察がつく。

 No.22はメガホンが列席者の前を通過した時に撮ったもので、スピードがあまりに速すぎて明瞭に撮れていないので、特別これだけは輪郭を縁どってある。この時はフラッシュのボタンを霊媒の椅子の左手の肘かけに取り付け、ブラック・クラウドが霊媒の指を使って押している。

 メガホンの現象で列席者がよく心配したのは、時おりメガホンが猛烈な勢いで霊媒のところへ戻ってきて、勢いあまって頭部に激突することがあることだった。ブラック・クラウドの説明によると、それはメガホンを握っているエクトプラズムの腕《アーム》No.12No.16参照)が霊媒の身体に戻るからだという。

 またある時は、理由はまだ分からないのであるが、メガホンが大きく振りをつけて、容赦なく、思い切り霊媒の頭部を何度も何度も叩くのである。しっかりとしたブリキ製の、長くて重いメガホンを使用していた時にも同じ現象が起きたことがあったが、普通の人間なら間違いなく脳震盪を起こすところだった。

 筆者が初めてこの現象を見た時、まさか霊媒の頭を叩いているとは信じられず、てっきり壁でも叩いているのだろうと思っていた。ところがあとで調べてみても、叩いた跡がどこにも見られなかった。

 その次の実験会で筆者はブラック・クラウドに呼ばれて霊媒の側頭部に手を当てがうように言われた。言われた通りにしていると、その手の甲の上をメガホンで思い切り叩いて、いつも本当に霊媒の頭を叩いていることを示した。

 注目すべきことは、そうした現象のあと、霊媒の頭に傷もコブも残っておらず、赤いアザすら見られなかったことで、これは入神状態の身体がそうした衝撃に対して鈍感であるだけでなく、細胞組織そのものが外部からの影響に“備えている”ものと推察される。死体なら間違いなく傷ついてしまう。ここにもスピリットの霊力のもう一つの不思議がある。つまり、どうやってあれだけの衝撃を防ぐかということである。

 このことに関連して興味ぶかいのは、入神中の霊媒の脈搏を計った医師(複数)が一分間に90〜100であることを確認していることである。一人の医師はこの脈搏が二時間(これが実験会の平均である)も続けば普通なら生命にかかわることも有り得ると述べていた。

 呼吸回数は普通の倍であった。

 二つ部分を組み合わせてあるメガホンを使用すると、時おりそれが二つにはずされ、両者が遠く離されたことがある。ある時は離された片方が列席者の円座の外に持って行かれた。やがてそれが列席者の頭ごしに円座の中へ持ち込まれて二つがきれいに合わさった。こうした分離と合体は何度も見られた。


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